Human Being
そなたに正義の心の非ずや、と僧が問う。
その足下に転がる屍を見据えて。
正義とはなんだ。
正義とは。正義とは正しい道理。人が守るべき理。人の全うすべき道。
人が信じ、その為になら如何なる労苦も惜しまぬ、最も尊きもの。
人を殺めるなどは、正義から最も遠きものだ。
そんなものが正義か。ちゃんちゃらおかしいではないか。
ならばこれが俺の正義だ。
猿は手近な屍の頭を蹴りあげた。
弾けた頭から、更に赤い飛沫が飛ぶ。
それが正義だと。お前の正義だと。
そんな正義があるものか。
あるさ。
俺にとってはお前が正義だ。
お前の他に何も要らぬ。
お前が生きてさえいればそれでいい。
他のものなど要らぬ。誰も何もかも。
それは正義ではない!
お前はまだ知らぬのだ。
何が正しいか。何が尊いか。
お前のぬかす正義とやらは
知らないし知る必要もない。
俺は俺の正義を守る。
俺が信じ、その為になら如何なる労苦も惜しまぬ、最も尊きものを。
ただ、お前だけを。