下雨
雨が降っているな、と三蔵。
そうですね、と悟空。
早く止むと良いのに、と三蔵。
今度は悟空は、肯んぜない。
激しい風雨は、一行が雨宿りに借りた廃寺の中までも
構わず降り込んでくる。
雨が止めば。
西への旅を続けることが出来る。
だが。
雨が降っていれば。
この人の身体を休めることが出来る。
長い長い旅で
疲れたこの人の脚を
安らげることが。
雨が止めばいいのに。
雨が止まなければいいのに。
二つの心はどちらも本当で、
悟空は何も返さずに、
ただ三蔵の横に座って雨を見ていた。