第十四回 華光 東岳廟を閙がす

 さて、華光は東岳廟の大門の下までやって来ると、草野三聖に会いました。

 三聖が訊ねるには、

「お前さんは誰だい?」

 華光、

「俺は華光天王だ」

「お前さんはとんでもない奴で、東で暴れ西に突っ込み、無事では済まされないと聞いておるぞ。なんだってワシらの東岳廟にやって来たんじゃ?」

 そう言って、三聖は華光を捕まえて離そうといたしません。華光は怒って、

「てめえらそろいも揃って、なんでそんなことを言って俺をバカにするんだ?」

 というと金磚を投げつけて三聖を打ちのめしました。三聖は慌てて逃げ出し、この事を東岳聖帝に報告いたします。聖帝は驚いて功曹に訊ねました。

「華光はとんでもない奴だと聞き及んでおるが、奴はなんでまた我が東岳廟に来たのであろう?」

 功曹、

「きっと訳があってのことでございましょう、ここは礼を尽くして彼を持てなしましょう」

 言い終わるか終わらないかというところに、華光が現れました。聖帝は迎え入れて席を勧め、茶を出して華光を持てなします。

 聖帝、

「天王が此方までご足労下さるとは、一体どういうご用件でございますか?」

 華光、

「今日は別に挨拶に来たというわけじゃなく、俺の母親が来ていないかどうか調べに来たんだ」

「ご母堂様はどのようなお方で?」

「母は名を吉芝陀聖母、又の名を簫太婆という」

 聖帝はこれを聞くと、すぐに功曹に言い付けて吉芝陀聖母と簫太婆が来ていないか調べさせました。功曹が帳簿を調べ、聖帝に答えます。

「簫太婆は来ておりますが、吉芝陀聖母は来ておりません」

 華光、

「吉芝陀聖母が簫太婆で、簫太婆が吉芝陀聖母なんだ」

 聖帝、

「ですがそれではお二人じゃないですか」

「併せて一人さ」

「お二人でしょう」

「一人だけだ!」

 そこへ功曹が進み出て、

「ここではただ人が死んだら、ここの帳簿に名前を残してから、みんな陰司に収められます。もし天王がはっきりしたことをお知りになりたければ、陰司に行かれるが宜しいでしょう。そうすれば全ては明らかになります」

 これを聞くと、華光は聖帝に別れを告げ、陰司へ母親を捜しに向かいました。

 陰司で何が待ち受けてるのか、それは次回のお解き明かしで。